蔵元めぐりマップ

原田酒造 株式会社
浜千鳥
住 所:891-9214 鹿児島県大島郡知名町知名379−2
Tel:0997−93−2128
創 業:昭和22(1947)年
蔵人数:5人
代表者:原田 孝志(はらだ・たかし)
杜 氏:市部 真吾(いちべ・しんご)
主な銘柄:「昇龍」「満月」「バーレル1983」
http://www.haradasyuzo.com

戦後の闇に希望を灯し、時と共に歩んできた蔵

amami.jpg 知名町・知名の港近くに位置する原田酒造(株)。蔵の創業者は、戦前より沖永良部島の電力事業に携わっていた初代・原田孝次郎氏。戦後間もない昭和22(1947)年、知名町・知名で量り売りの泡盛を造っていた「久木田酒造」よりのれん分けし、同じく知名で創業した。創業時の銘柄は「黄金水(おうごんすい)」だったという。
 昭和32年(1957)に工場を現在地へ移転。現在の代表銘柄は、昭和47(1972)年に発売された5年貯蔵古酒「昇龍」。ほかに「満月」「バーレル1983」など、年間250石(約45キロリットル)ほどを生産する。
 創業者の原田孝次郎氏は、戦前の昭和4(1929)年に送電を開始した島内初の発電所「沖永良部電気(株)」建設時に現場監督を務め、昭和7(1932)年に同社が旧知名村により公営化されてからは、電気課で運営の任にもあたっている。
 当初の発電所は旧和泊村・古里にあったが、その後旧知名村・小米の役場隣に移転している。戦時下の昭和18(1943)年、国策により電気事業は九州電力に吸収合併されたが、終戦間近だった昭和20(1945)年2月の空襲で小米にあった発電所は全焼してしまい、島の夜は再び闇に包まれることとなった。
 戦後、孝次郎氏は焼失してしまった発電所を再建するために立ち上がり、私財を投じ粉骨砕身して電力の復旧に努めた。
 奄美群島が日本より分離され、あらゆる物資の流通が途絶えていた中、加計呂麻(かけろま)島の旧・実久(さねく)村の瀬相から日本海軍が使用していた発動機を運び出し、潜水夫を雇って沈没船に積まれた電線を海底から1ヶ月かけて引き上げるなど、並々ならぬ努力の末、昭和23(1948)年6月1日、島に戦後初めての電灯を灯すことができた。そうした労苦の最中に、蔵を興し酒造業にも取り組んでいる。
 蔵の経営者であるとともに、小学校のPTA会長を子供と孫の二代にわたり25年間務め上げ、交通安全協会の活動で23年にわたり小学生の通学時見守りを行っていた。奉仕精神に溢れた心の温かい人物だったという。

amami.jpg 二代目で現代表の原田孝志社長は、高校を卒業後の昭和40(1965)年に帰島。18歳から蔵の仕事を手伝い、昭和47(1972)年に25歳で蔵を引き継いだ。
 同年に発売された「昇龍」は、5年以上貯蔵の古酒銘柄。原田社長が蔵を継ぐにあたり「小さな蔵が生き残って行くためには、他にない蔵の個性を打ち出せる美味しい黒糖焼酎を造らなくては」との考えで、長期貯蔵銘柄の開発を決意。5年貯蔵の原酒をベースに樫樽(かしだる)で風味付けし5年貯蔵した原酒をブレンドし、香り豊かでコクのある黒糖焼酎が出来上がった。
 銘柄名は、原田社長が月を眺めているうちに龍が満月に向い昇って行くイメージが浮かび、「昇龍」と名付けたという。
 昔から「黒糖焼酎は寝かしておくほど熟成し価値が増す」と言われるが、5年もの長期貯蔵銘柄を敢えて代表銘柄としている奄美黒糖焼酎の蔵はここだけであり、そのこだわりと覚悟のほどが伺える。

DSCN0275.JPG 蔵では代表銘柄の「昇龍」以外にも長期熟成に力を入れ、「バーレル1983」が平成23(2011)年の第51回全国推奨観光土産品審査会で優秀観光土産品に推薦されるなど、熟成とブレンドの妙による味造りが高く評価されている。
 造る銘柄は短いものでも3年、長いものでは10年を超す貯蔵・熟成を経て出荷され、常圧蒸留のコクと充分に時を経た原酒ならではの芳醇な香りとまろやかさを備える。
 3年貯蔵の常圧蒸留酒「満月」、15年熟成の原酒と1983年より樫樽(かしだる)に貯蔵する原酒をブレンドした「バーレル1983」のほか、限定生産で数々の古酒銘柄を世に送り出している。
DSCN0275.JPG 平成15(2003)年には「昇龍」が全国酒類コンクールの黒糖部門で第一位となり、記念にその年の杜氏(とうじ)をしていた福好太郎氏の名を冠した20年古酒「好太郎」を限定発売。3,000本限定でこれまでに2回販売し、全国の古酒愛好家らに好評を博した。
 平成19(2007)年には蔵に眠る30年古酒を甕(かめ)入りの150本限定で販売し、好評のうちに完売している。
 現在も蔵の貯蔵タンクには沢山の原酒が眠り、出荷の日を待っているが、原田社長は「いい味に仕上がった時に世に出したい」と、原酒が時に磨かれて行く様子を見極めている。

DSCN0266.JPG 原田社長の次女の菊地さおりさんは、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会認定の「焼酎きき酒師」(旧名称「焼酎アドバイザー」)。顧客へより良い提案ができるよう、自身のスキルアップのために資格を取得した。
 焼酎品質鑑定士、フード&ビバレッジナビゲータを習得し、おもてなしや焼酎と料理の組み合わせ、酒器の選び方などを学んだ。「女性が手に取りやすいパッケージの商品開発や、黒糖焼酎を楽しむ会などを企画してみたい」と語る。奄美黒糖焼酎の世界に新しい風を吹き込んでくれそうだ。

     参考文献:「知名町誌」(1982年)、「沖永良部島史」坂井友直(1933年 奄美社)
          「月刊奄美大島縮刷版 上巻」(1983年 奄美社)
     取材協力:和泊町歴史民俗資料館


原田酒造流 奄美黒糖焼酎の楽しみ方

DSCN0504.JPG 菊地さおりさんのお勧めは「昇龍のお湯割り」。香りが立ち、常圧蒸留の古酒が持つ豊かな風味を堪能できる。
 酒の肴に選んだのは、「ソーキ骨と昆布の煮物」。豚と昆布の旨味が焼酎とよく合う。
 酒器と料理の器は、地元知名の窯元「えらぶ黒潮(くるしゅ)焼」の作。沖永良部島の赤土を思わせる野趣に溢れた風合いの器に、島料理や黒糖焼酎が良く似合う。


蔵見学について

DSCN0405.JPG見学可
時間帯 お問い合わせください。
休日 土曜・日曜・祝日
駐車場 有(3台)
要予約
問合せ先 Tel:0997−93−2128


見どころ

 蔵の近くに「えらぶ黒潮焼」の窯元がある。見学の際は事前に電話で問い合わせを。
 同窯元の陶器は「フローラルホテル」の売店でも取り扱っている。

 蔵から車で15分ほどの住吉には銘柄「昇龍」と同名の鍾乳洞「昇竜洞」があり、全長600メートルが一般公開されている。


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